しまちゃんなりの小説の読み方

読了した小説を、ある観点から紹介していきます!そういう見方があったか!と思ってくれれば幸いです

村上春樹にとっての社会規範場面

ねじまき鳥クロニクル』を読了しました。

この作品は、『ノルウェイの森』が爆発的に売れたあと、アメリカに逃亡した時に書かれた本です。

この作品が書かれた当時、日本では劇的な事件がありました。それは、「阪神・淡路大震災」と「地下鉄サリン事件」です。どちらの事件も、被害が大きく、日本を揺るがすものでした。

村上春樹さんはこの事件があって、日本に帰ってきます。この時、「社会規範を考えなくてはならない」と感じたそうです。ねじまき鳥クロニクルでは、その考え方が色濃く出ています。

 

まず、村上春樹作品の中で珍しい、「歴史」が出てきました。ねじまき鳥クロニクルでは、戦間期の暴力、権力など、かなりショックな場面が出てきます。また、人の遺伝、ある土地の伝承など、村上春樹さん自身が作り出した「歴史」があります。

多くの「歴史」が出てきましたが、なぜこの要素を入れようと、著者は思ったのでしょうか?

私が読んでみて感じたのは、「歴史は繰り返すが、昔から新たな未来に向けて向上することができる」ということを伝えたいのではないかということです。

主人公と似た人が、戦間期の記録から登場します。村上春樹さんは、主人公のメタファーとして、戦間期の似た人を出したのだと感じました。メタファーの主人公は、獣医で、軍の命令には逆らえない、ソ連軍が攻めてきているから死も近いという、権力と運命に圧迫された状況にいました。しかし、世間的に有名で、権力もある義兄に、主人公は反抗していきます。ただ権力、運命に振り回されるのではなく、信念を持って生きる(今回は妻を取り戻すという内容)。そのためならあらゆる手段を用いる覚悟である。そのように私は感じました。

運命は逆らえるものであると伝わってきました。私自身、そういう決まりだからと、スっと運命を受け入れてしまいます。そういう人は現代に多いと村上春樹さんは感じているのではないでしょうか。

 

テレビの場面もありました。義兄の権力によって、主人公は社会的に消えかけてしまいます。その中の描写で、「なぜテレビがすべて信用できるのか」と、書かれています。

権力が進出したものではないかと疑う気持ちはないのかと言われているように感じます。特に現代はそうでないかと思います。政府の権力がテレビ当局に進出している今、政府にとってまずい発言をすればテレビから消されます。また、政府の汚職を紛らわすため、芸能人のスキャンダルを話題にし、世論を激しくしないようにもしています。受動的に、無意識的にテレビの言うことを信じてしまっている私たちに、一石投げつけるような内容であったと思います。

 

村上春樹さんが伝えたかった「社会規範」はこれだけではないと思います。村上春樹さんが伝えたかったことは、是非読んでみて感じて欲しいと思います。

 

今回のブログを書く上で、加藤典洋さんの「村上春樹は、むずかしい」を参考にさせて頂きました。村上春樹作品のバックグラウンドを知ることができる本だと思います。村上春樹さんに興味のある方は是非読んで欲しいと、思います