しまちゃんなりの小説の読み方

読了した小説を、ある観点から紹介していきます!そういう見方があったか!と思ってくれれば幸いです

小説を読む(3)

池井戸潤さんの『下町ロケットシリーズ』の面白さはどこにあるのか、私なりの考察をしていきます

 

ポイントは3つです

⑴大企業と中小企業との関係倫理が、私たちにも共感できる所がある

⑵登場人物の個性がはっきりと出ていて、飽きない

⑶人情の良さが表れていて、心が温まる

です

 

⑴について、中小企業はどうしても、大企業に押しつぶされてしまいます。下請けとして、大企業のもとについたとしても、『ヤタガラス』であったように、大企業の倫理などで、中小企業に急なピンチが来る場合があります。

大企業の場合も、人間関係に潰されて将来が不安定になります。社内政治が上手い人が、上へと登りつめていく。真面目が、熱い夢を持つ人が、駆け昇るとは限りません。

どちらの立場についても、「現実の厳しさ」が共通しています。生活、人間関係などに苦しさを感じている人に、ぐっとくるようになっています

 

⑵主人公の佃さん(中小企業の社長、元研究者)をはじめ、出てくる人の性格が、手に取るように感じられます。「小説を読む⑵」にも書きましたが、「会話」から非常に多くのことを読者に伝えてくれます。財前さん(佃さんが信頼する大企業の方)の賢さも、水原(財前の上司)などとの社内政治における会話で現れてきます。

また、殿村さん(佃製作所の経理担当)のオリジナルストーリーといった、個人個人のストーリーが、個性を強くさせ、読者の気分を上げています。殿村さんのストーリーは、銀行に勤めて、サラリーマンとして生きてきたけど、充実感がなく、中小企業の佃製作所に飛ばされました。しかし、佃製作所のみんなとの生活が、殿村さんに満足感を与えています。その生き生き、躍動してる姿が、ありありと思い浮かべることが出来ます

 

⑶これは、⑵に通じる所があるのですが、佃さんの熱い感情が、読者の心を温かくします。佃さんは、ロケットの発車の失敗によって、研究者を辞めてしまい、夢をもたない、つまらない生活を送ろうとします。しかし、佃製作所の倒産が目前となり、自分のスイッチを入れ替え、ロケット作りをもう一度、目指すことしました。

やっぱり頑張っている人は応援したくなります。よくある話とは思うのですが、小説の「人を引きつける」というポイントから見れば、ありなのではないかと思います。

 

さすが池井戸潤さんの作品と思います。半沢直樹ほどの影響力は持たなかったものの、ドラマ化するほどの作品を再び生む力に、憧れてしまいます。着眼点も面白くて、新しい分野の話を持ってくる力にも、憧れてしまいます。

池井戸潤さん、楽しませて頂き、ありがとうございました